【曲解説】U2 – Beautiful Day

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「ビューティフル・デイ」はアイルランドのロックバンドU2の曲。この曲は彼らの10枚目のスタジオアルバム『All That You Can’t Leave Behind』(2000年)の最初のトラックで、2000年10月9日にアルバムのリードシングルとしてリリースされた。この曲は商業的に成功し、アルバムをマルチプラチナの地位に押し上げるのに貢献し、U2の最大のヒット曲の一つとなった。

チャート成績

この曲は好評を博し、バンドにとって母国アイルランドでは14番目のナンバーワンシングル、イギリスでは4番目のナンバーワン、オランダでは初のナンバーワンとなった。また、オーストラリア、カナダ、フィンランド、イタリア、ノルウェー、ポルトガル、スコットランド、スペインのチャートでもトップとなり、オーストリア、ベルギー、ドイツ、ニュージーランド、スウェーデン、スイスではトップ10入りを果たした。アメリカのビルボードホット100では最高21位を記録し、バンドにとって1997年の「Discotheque」以来の最高位となった。

グラミー賞3冠

2001年、この曲は第43回グラミー賞授賞式で、年間最優秀楽曲賞、年間最優秀レコード賞、最優秀ロックパフォーマンス(デュオまたはグループ、ボーカル付き)の3部門を受賞した。

ちなみに年間最優秀楽曲賞と年間最優秀レコード賞の違いは以下の通りである。

年間最優秀楽曲賞(Song of the Year):

  • 対象: 主に作詞・作曲家を対象とする賞。
  • 評価基準: 楽曲の歌詞やメロディなど、楽曲そのものの質を評価。
  • 受賞者: 受賞者は通常、楽曲の作詞・作曲家。

年間最優秀レコード賞(Record of the Year):

  • 対象: レコーディング全体に対する賞。
  • 評価基準: 楽曲のパフォーマンス、プロダクション、録音技術など、レコーディングそのものの質を評価。
  • 受賞者: 受賞者は通常、歌手、プロデューサー、エンジニア、ミキサーなど、レコーディングに関わったすべての人々。

歌詞の意味

ボノは「Beautiful Day」を「すべてを失った男が、まだ持っているものに喜びを見つける」という内容だと語った。Blender誌はこの曲と「it’s a beautiful day」というフレーズを「物質的なものを捨て、世界そのものに恵みを見つけるビジョン」だと解釈した。


この曲は「出口のない閉塞」と「それでも世界は美しい」という二つの感覚が同時に走る構造になっている。冒頭で描かれるのは、硬い地面を割って芽を出す花のように、どう見ても育ちようのない環境で無理に生きようとする心の姿だ。居場所のない町、進まない渋滞、当てにしていた友人とのすれ違い。状況だけを見れば救いはないが、その直後に「It’s a beautiful day」が突然立ち上がり、現実の苦さとまったく噛み合わない“美しさ”が並置される。

この矛盾は逃避ではなく、視点の反転に近い。道に迷って先が見えない状態すら、他者の想像力の迷路に入り込むような出来事として描かれ、目的地を失った旅も、逆に開かれた可能性として扱われる。町への愛着が嘘のようでも、それでも「愛している」という言葉を選ぶことで、自分の現実を肯定し直す姿勢が浮き上がる。

曲の後半では突然視界が地球規模へ広がる。雲に割られる渓谷、海を横切る船団、夜の砂漠の炎、夜明けの油田、洪水のあとに現れる鳥と葉。これらは美化された観光的な風景ではなく、人間の営みの残酷さや自然の回復力を含んだまま提示される。世界の複雑さのすべてを抱えたまま、それでも「色が戻ってくる」瞬間を見ようとする視線が中心にある。

コーラス後の再確認—“hopeless case”ではないという断言—は、救済を誰かに求めるのではなく、触れられ、導かれることで自分が変わりうるという自己感覚の回復を示す。最後に繰り返される“what you don’t have you don’t need it now”は諦念ではなく、失ったものや知らないものに縛られる必要はない、という自己解放の論理として機能する。

全体としてこの曲は、状況そのものが美しいのではなく、閉塞のただ中で世界を見る角度を変えた瞬間に美が立ち上がるという構造を描いている。絶望と希望がどちらも誇張されず、むしろ同時に存在することが前提として扱われ、世界の広さに触れることで自分がまだ終わっていないと感じ直す、その感覚が核になっている。

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