【曲解説】The Doors – Alabama Song (Whisky Bar)

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曲情報

「Alabama Song(Whisky Bar)」は、ドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトが1925年に書いた詩に、作曲家クルト・ヴァイルが曲を付けた楽曲の英語版である。英訳はブレヒトの協力者であるエリザベート・ハウプトマンによるもので、1927年の舞台劇『リトル・マホゴニー』のために書かれた。この曲は1930年のオペラ『マホゴニー市の興亡』でも再利用され、後年にはドアーズやデヴィッド・ボウイによってカバーされたことで広く知られている。

ドアーズによるバージョン

「Alabama Song(Whisky Bar)」は、1966年にロックバンドのドアーズによって録音され、1967年1月4日に発表されたデビューアルバム『The Doors』に収録された。ドアーズのドラマー、ジョン・デンスモアとギタリスト、ロビー・クリーガーによれば、この曲はキーボーディストのレイ・マンザレクによってバンドに紹介されたが、元の旋律に満足できなかったため、メンバーで大胆にアレンジし直したという。

このバージョンはアヴァンギャルドとカーニバル音楽、そしてサイケデリックな要素を融合させたもので、ドアーズが活動初期に出演していたクラブ「ウィスキー・ア・ゴーゴー」での定番レパートリーでもあった。ヴァン・モリソンは、同クラブでこの曲を演奏するドアーズを見て驚いたと語っている。

ヴォーカルのジム・モリソンは、原詩の「次の可愛い少年を教えて」にあたる部分を「次の少女を教えて」に変更して歌った。録音では、レイ・マンザレクがオルガンとキーボードベースに加え、マルクソフォンも演奏しており、このアイデアはプロデューサーのポール・A・ロスチャイルドによるものだった。マンザレクは後に「あのチリンチリンという音が完璧にハマった」と振り返っている。

歌詞の意味

この曲は放浪者のような語り手が酒場や慰めを求めて夜をさまよう姿を描く内容になっている。語り手は強い切迫感に追われ、目的の酒や相手に辿り着けなければ破滅が待っているかのような極端な心情を吐露する。月に別れを告げる場面では、身近な支えを失った喪失感と、それでも酒を必要とする衝動が並列され、全体に退廃的で享楽的なムードが漂う。反復される表現の多さが、逃避と依存を繰り返す無限循環のような感覚を強調している。

mama の意味

  • mama” は比喩的な表現。ここでは実の「母親」ではなく、しばしば「故郷」や「保護してくれる存在(母なるもの)」を象徴するものとして読まれる。
  • また、原曲(Kurt WeillとBertolt Brechtによるドイツ語オペレッタ)では、酒場や娼婦街を象徴する存在とも解釈される。
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