【曲解説】Sting – Fragile (from “…All This Time”)

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「Fragile」(フラジャイル)はイギリスのミュージシャン、スティングの楽曲。

この曲は、1987年10月13日にリリースされたスティングの2枚目のスタジオアルバム『ナッシング・ライク・ザ・サン』(…Nothing Like the Sun)に収録された。また、シングルとして1988年4月1日にリリースされた。

『…all this time』でのフラジャイル

スティングは、イタリアのトスカーナにあるヴィラ・イル・パラジオの自宅でコンサートを開催したいと考え、ミュージシャン仲間を集め、練習と演奏を依頼した。公演の夜に至るまでの出来事が撮影されている中で、公演当日の2001年9月11日に米国で9.11同時多発テロが発生した。

スティングは全員を集め会議を開いた。ライブを中止するかどうか「みんなの意見が聞きたい」と問いかけた後、アコースティック・ベース担当のクリスチャン・マクブライドは「ショー全体はやれない。それだけは確かだ。選曲して数曲だけやるのはどうだろう。この状況に合わない曲もあるし」と口を開き、続いてギター担当のドミニク・ミラーが「”フラジャイル”はやるべきだ。状況をよく把握して皆で慎重に選曲していこう」と提案した。ピアノ担当のジェイソン・リベロは「”フラジャイル”は今日亡くなった人々に送る前向きなメッセージになると思う」と賛同した。スティングはまとめとして「今日は初めに1曲だけやると伝えよう」と「フラジャイル」だけを歌うことに決めようとしたが、それに対してドミニク・ミラーが「1曲やってしまったら引き下がれなくなるだろう」と反対した。最終的にスティングが「1曲演奏した後に皆でもう1度決めようじゃないか」と提案し、皆がそれに賛同してライブを迎えることになった。

ライブでは「フラジャイル」を演奏する前に「この曲を犠牲者に捧げたい」とスティングが追悼の意思を示した。曲が終わった後、プログラミングとキーボードを担当するキッパーがそのまま「ア・サウザンド・イヤーズ」に入る流れのBGMを流し、「当初予定していた内容を少し変更せざるを得ないが…」とスティングが言ったところでジェイソン・リベロのピアノ演奏が始まり、MCをそれ以上続けることなく、曲に入った。

歌詞の意味

この曲は暴力の無意味さと人間の脆さを静かに見つめる内容になっている。流れる血や夕日の色といった描写は、争いの痛ましさを象徴し、雨が痕跡を洗い流しても心に残る傷だけは消えないという構図が示される。長く続いた対立の果てに起きた出来事を通し、暴力からは何も生まれないという結論が提示され、生まれた環境や状況に翻弄される人間の弱さが語られる。繰り返される雨のイメージは、涙にも似た普遍的な悲しみとともに、人がいかに壊れやすい存在であるかを告げる役割を担っている。

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