音源

New Moon Disc 1
Elliott Smith
- Angel in the Snow
- Talking to Mary
- High Times
- New Monkey
- Looking Over My Shoulder
- Going Nowhere
- Riot Coming
- All Cleaned Out
- First Timer
- Go By
- Miss Misery (Early version)
- Thirteen (Big Star cover)

New Moon Disc 2
Elliott Smith
- Georgia, Georgia
- Whatever (Folk Song in C)
- Big Decision
- Placeholder
- New Disaster
- Seen How Things Are Hard
- Fear City
- Either/Or
- Pretty Mary K (Other Version)
- Almost Over
- See You Later
- Half Right
曲情報
「Going Nowhere」はアメリカのミュージシャン、Elliott Smith(エリオット・スミス)の死後にリリースされたコンピレーションアルバム『New Moon』に収録された曲。このアルバムは2007年5月8日にキル・ロック・スターズからリリースされた。
歌詞の意味
この曲は過去の関係に戻ってしまったときの、懐かしさと痛みが同時に押し寄せてくる瞬間を静かに切り取ってる。ふたりは最初から歩み寄る気がなく、挨拶ひとつの仕草にさえ「もう変わらない」という硬さがにじむ。会話は反響にかき消され、言葉よりも沈黙のほうが雄弁で、どこにも進めない関係がそのまま空間に滲み出している。
語り手はかつての相手の動きを目にした途端、置き去りにしたはずの感情が一気に戻ってきてしまう。でも同時に、この関係は既に終わってしまったという事実もよく分かっている。相手が口にした取り返しのつかない言葉、変わらない態度、自分に覆いかぶさってくる昔の記憶。それらを前にして、もう前に進むことも後ろに戻ることもできなくなる。
昔のレコードが床に置かれたままという描写は、触れれば痛む思い出そのもので、手を伸ばせばまた同じ場所に引き戻されるから再生できない。結局ふたりは再会しても何も変えられず、過去の焼き直しのように同じ動きを繰り返して、同じ結末へ向かっていく。
全体を通して、戻ってきたところで何も得られず、どんな方向にも進めない関係の停滞が淡々と描かれ、その「どこへも行けない」という感覚だけが最後に残る曲になっている。
メビウスの輪?
この歌詞を最初に見た時、「walk the stairs」の部分は「walk down the stairs」の聞き取り違いかと思った。「walk the stairs」は不自然なフレーズで、“walk up” や “walk down” という方向性(上下)を示す前置詞をともなうのが普通である。しかし、実際に曲を聞いてみると確かに「down」とは言っておらず「the」であった。そこで考えた結果、その階段が上も下もないメビウスの帯のような階段であるなら、このフレーズが自然な表現であることに気がついた。つまり「I won’t walk the stairs with you tonight(今夜、君とその階段を歩くことはない)」というフレーズは「今夜、君と永遠にループする階段を歩いてもどこにも行き着けないから、一緒に歩くつもりはない」ということで、議論や口論、不毛な関係の継続に対する厭気についての比喩になっていると解釈できる。


