【曲解説】LE SSERAFIM – The Great Mermaid

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「The Great Mermaid」(ザ・グレート・マーメイド)は韓国のガールズグループ、LE SSERAFIM(ルセラフィム)の曲。この曲は2022年5月2日にリリースされたデビューミニアルバム『FEARLESS』に収録された。

歌詞の意味

この曲は愛や成功のために自分を犠牲にすることが美しいとされる古典的な物語構造を拒否し、自分の本質を手放さずに生きようとする姿勢を描いている。

語り手は誰かの望む理想像になるために声や夢や個性を差し出すよう求められる世界に強く反発する。自分の価値は他人に決められるものではなく、本当の意味で大切なのは自分の願いと自分の生き方だと宣言している。

また、恋愛神話にありがちな「誰かのために自分を犠牲にするヒロイン像」や、「愛されるためには何かを捨てなければならない」という信念そのものを否定する視点が貫かれている。歪んだ愛の形や一方的な期待に従うことを拒み、自分のスタイルで生きることを選ぶ姿勢が強く表れている。

海へ飛び込むイメージは、恐れを振り切って未知へ進む決意の象徴になっている。たとえ周囲が否定しても、自分の夢が広がっていく方向へ向かうべきだという意志が込められている。

総じてこの曲は、悲劇や犠牲を前提とした物語から抜け出し、自分自身の声と未来を取り戻すというテーマを持った、反抗と自立のメッセージとして読むことができる。

タイトル「The Great Mermaid」の意味

タイトルの「The Great Mermaid」とは「偉大な人魚」「大いなる人魚」のこと。

黄金の王子様(golden prince)って何?

「黄金の王子様」は、後に続くフレーズを考慮に入れると、オスカー・ワイルドの『幸福な王子』のことだと思われる。この短編小説は自己犠牲の愛についての物語である。

ある街の柱の上に、「幸福な王子」と呼ばれる像が建っていた。かつてこの国で、幸福な生涯を送りながら、若くして死んだとある王子を記念して建立されたものだった。両目には青いサファイア、腰の剣の装飾には真っ赤なルビーが輝き、体は金箔に包まれていて、心臓は鉛で作られていた。とても美しい王子は街の人々の自慢だった。しかし、人々が知らないことが有った。その像には、死んだ王子自身の魂が宿っており、ゆえに自我を持っていること。王子が、かつて宮殿にいた頃には気付かず知らなかった、この町の貧しい、不幸な人々の実態を知り嘆き悲しんでいることである。

渡り鳥であるが故にエジプトへ旅に出ようとしていたツバメが寝床を探し、王子の像の足元で寝ようとすると突然上から大粒の涙が降ってくる。 王子はこの場所から見える不幸な人々に自分の宝石をあげてきて欲しいとツバメに頼む。ツバメは早く南へ渡りたかったが、やがて言われた通り王子の剣の装飾に使われていた美しいルビーを病気の子供がいる貧しい母親に届けた。

王子は片目のサファイアを飢えた若い劇作家に、もう片方を幼いマッチ売りの少女に持っていって欲しいと言われ、ツバメは「そんな事をしたら目が見えなくなってしまう」と注告するが、 「この風景を見る方が辛い」と言われ言われたまま両目のサファイアを届ける。

エジプトに渡ることを中止し、街に残り、王子と共に過ごす覚悟を決意したツバメは街中を飛び回り、両目をなくし目の見えなくなった王子に色々な話を聞かせる。王子はツバメの話を聞き、まだたくさんいる不幸な人々に、自分の体の金箔を剥がして分け与えて欲しいと頼む。

やがて冬が訪れ、王子はかつての輝きを失い、みすぼらしい姿になり、南の国へ渡り損ねたツバメも徐々に衰え、弱っていく。自らの死を悟ったツバメは最後の力を振り絞って飛び上がり、目の見えない王子にキスをし、やがて彼の足元で力尽きる。その瞬間、王子の鉛の心臓は音を立て二つに割れてしまった。みすぼらしい姿になった王子の像は心無い人々によって柱から取り外され、溶鉱炉で溶かされたが、鉛の心臓だけは溶けず、ツバメと一緒にゴミ溜めに捨てられた。

天国では、下界の様子の全てを見ていた神が、天使に「この街で最も尊きものを二つ持ってきなさい」と命じ天使を遣わせる。天使はゴミ溜めから王子の鉛の心臓を、そしてツバメの骸を持ってくる。神は天使を褒め、そして王子とツバメは楽園で永遠に幸福になった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/幸福な王子

オスカー・ワイルドの線で考えると、この曲の歌詞の全体的な意味が理解しやすい。

自分のサファイアの目玉をあげたりする王子のように、自己犠牲の愛でもって、美しい声や七色に光る尾ひれを誰かにあげたりしたくはない。犠牲の上に成り立つ幸福/愛ならいらない。そんなねじれたプロット(歪んだラブストーリー)ならいらない、ということ。

ちなみに英語には「no music, no life」(音楽なしじゃ生きていけない)のような、どちらか一方がなければもう片方も成立しないという依存関係を表す「no-, no-」という形があるが、必ずしもその意味になるわけではなく、ここでは並列的な否定を表していると解釈できる。

魔女が魔女して??

2017年頃からDCインサイド(韓国のネット掲示板)を中心に広がり始めた新造語「○○가 ○○하다(○○が○○する)」の言い回しで、元々はサッカーチームの「バルセロナがバルセロナした」という言葉がオリジナルと言われている。ただし、このようなフレーズ(直前の主語で使われている名詞の動詞化)は英語にも日本語にも存在する。

大谷翔平が19XX年以来の記録を達成
→「大谷が大谷してるだけだ」

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