【曲解説】Radiohead – Black Star

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翻訳メモ

Beam me home … SFテレビシリーズ『スタートレック』の有名なセリフに”Beam me up”「転送を頼む」があり、そこから取られた言葉だと思われる。

曲情報

「ブラック・スター」は1995年にリリースされたレディオヘッド2枚目のスタジオアルバム『The Bends』に収録された曲。

歌詞の意味

この曲はトム・ヨークのいつものパラノイア的な歌詞だが、どこからどこまでが現実なのかを判断することが難しい内容となっている。

可能性としては以下の選択肢がある。

  1. この女の人は存在しなくて、主人公は精神疾患を抱えている
  2. この女の人は存在していて、主人公もこの女の人も精神疾患を抱えている
  3. この女の人は存在していて、主人公は健常で、この女の人だけが精神疾患を抱えている

 まずパラノイアという言葉についての定義について、パラノイアは日本語では偏執病、妄想症と訳される病気で、統合失調症の一種とする立場とそうでない立場があるが、統一した見解がない。統合失調症は英語でschizophreniaと言うが、この単語を耳にする機会はparanoiaに比べて圧倒的に少なく、paranoiaという言葉がschizophreniaという言葉を包括している。逆に日本では統合失調症という言葉の方が圧倒的に広く知られていて、統合失調症という言葉がパラノイアという言葉を包括している。少なくとも一般レベルでは使い分けられていない。ということでこの記事でも同一視して語ることにする。

統合失調症でよくある症状に「集団ストーカーされている」「体制に監視されている」「衛星に監視されている」などがある。

これらは認知バイアスの一種である帰属バイアスによるもので、帰属バイアスとは現実生活で起こる数々のエラーを体系的に捉えて、その原因を自己や他者やあるもののせいにするというものである。我々は客観的な観測者としては存在しえず、生まれてから個々人で違う経験をして、違う価値観を持ち、違うものの見え方をするので、健常者であれ異常者であれ、人は原因を求めるときには必ずこの帰属バイアスが働いている。

病人とみなされるかどうかの線引きはその帰属バイアスが社会に適合できるかどうかで決まる。通常、多くの人にとってありえないと思われることを事実だと思い込み、それが言動にあらわれた際に問題が起きてくる。

それがこの歌詞で言われている「黒い星」「落ちてくる空」「俺を家に転送する衛星」という妄想である。この主人公はありえない妄想を物事が上手く行かない原因と捉えようとしている。つまり客観的に言って病気である。

次に、この女の人は存在しないという説を採用するにあたって抑えておかなければいけない知識として「イマジナリーフレンド」という心理学・精神医学の現象がある

イマジナリーフレンド(英: imaginary friend)とは、心理学、精神医学における現象名の1つである。「想像上の仲間」や「空想の遊び友達」などと訳されることは多いが定訳はない。

概要
通常児童期にみられる空想上の仲間をいう。イマジナリーフレンドは実際にいるような実在感をもって一緒に遊ばれ、子供の心を支える仲間として機能する。イマジナリーフレンドはほぼ打ち明けられず、やがて消失する。

主に長子や一人っ子といった子供に見られる現象であり、5〜6歳あるいは10歳頃に出現し、児童期の間に消失する。子供の発達過程における正常な現象である。

姿は人間のことが多いが、人間ではない動物や妖精などの場合もある。 また、本人と対話ができるぬいぐるみなど、目に見えるモノをイマジナリーフレンドに含むのかについては研究者によって意見が異なる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89

そういえば何かの番組で社会学者の古市憲寿氏が妄想の友達と毎晩話すと言っていた。

青年期以降のイマジナリーフレンド
稀ではあるが、青年期以降もイマジナリーフレンドが持続したり、新たに出現したりするケースもある。犬塚らは、児童期にイマジナリーフレンドを持っていた者のうち、約半数が12歳以降も持ち続けていたと報告している。

イマジナリーフレンドは、本人はその架空性を意識しており、自己違和的でもなく、現実生活の障害になっているわけでもないため、病的と言えない部分がある。イマジナリーフレンドは本人にとって伴侶的ないしは適応的に働くことが多い。しかし、この適応的なスタイルが何らかの理由で破綻したとき、イマジナリーフレンドは本人の意思に逆らって暴走し、自傷や他害の要因になることもある。そのような場合、病的とみなされる

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%89

この曲に出てくる女の人はこのイマジナリーフレンドであるという説を主張したい。

主人公はイマジナリーフレンドとの関係が破綻して、暴走してしまって、不眠の原因にもなっている。現実にいる女の人を想定すると、仕事に行く前の姿のまま、帰ってくるまで立ち尽くしている人が存在するというのは非現実的だ。しかも58時間も寝ずに。関係が崩壊したイマジナリーフレンドという理解でいけば、何の違和感もなく全てが腑に落ちる。

トム・ヨーク本人が語るこの曲のテーマ

ギグでトムはこの曲を紹介した際にこう言った。
 「この曲は朝のセックスついてだ。朝はそれをするのに最適な時間だ。予め歯をきれいにしていれば」

この発言を鵜呑みにして、この曲が朝のセックスのことだと解釈すると、歌詞のあの部分がこうなって、ふんふん、はいはい、あーっ、なるほど、わからん。

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