【曲解説】JENNIE – Handlebars (Ft. Dua Lipa)

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「Handlebars(Ft. Dua Lipa)」(ハンドルバーズ・フィーチャリング・デュア・リパ)は韓国出身の歌手、ラッパーのJENNIEがイギリスのシンガーソングライターでファッションモデルのデュア・リパをフィーチャーした曲。この曲は3月7日にリリースされた初のソロフルアルバム『Ruby』に収録されている。

2025年3月11日0時、YouTubeにてミュージックビデオが公開された。

歌詞の意味

handlebar(ハンドルバー)とは?

自転車やバイクのハンドルのこと。この歌詞の中にある「Over the handlebars」というフレーズは、ハンドルを越えて前方に投げ出されることを指している。

fools rush in とは?

“fools rush inとはイギリスの詩人、アレキサンダー・ポープの1711年の『批評論』に登場する有名な一節「fools rush in where angels fear to tread(愚か者は天使すら恐れて足を踏み入れぬ場所に飛び込む)」に由来する。

▼以下は『批評論』の該当部分。

“The bookful blockhead ignorantly read,
書物に満ちた愚か者は、無知のままに読み
With loads of learnèd lumber in his head,

その頭には学識という名の無駄な荷物を詰め込み
With his own tongue still edifies his ears,

自分の舌で自らの耳を教化し
And always listening to himself appears. […]

常に自分の言葉に聞き入っているように見える。[…]
No place so sacred from such fops is barred,

どんなに神聖な場所も、そんな俗物どもから閉ざされてはいない
Nor is Paul’s Church more safe than Paul’s Churchyard:

セント・ポール大聖堂も、セント・ポール教会墓地も、同じように安全ではない
Nay, fly to altars; there they’ll talk you dead,

いや、祭壇に逃げ込んでも、そこでさえ彼らは語り続け、あなたが死ぬまで話し倒すだろう
For fools rush in where angels fear to tread.

というのも、愚か者は天使が恐れて足を踏み入れぬ場所にすらずかずかと入り込むものだからだ
Distrustful sense with modest caution speaks,

慎重な知性は、慎み深く注意深く語り
It still looks home, and short excursions makes;

自分の足元をよく見て、控えめに旅をする
But rattling nonsense in full volleys breaks,

だが、がらくたのような無意味な言葉は、激しい連射のごとく飛び出し
And, never shocked, and never turned aside,

決して動揺することなく、決して道をそれることもなく
Bursts out, resistless, with a thundering tide.”

抵抗を受けることなく、雷鳴のように轟く奔流となって溢れ出すのだ
(An Essay on Criticism, 612-630)

解釈

  • 知識を詰め込んでいるだけの無知な人間は、ただ本を読んで知識を蓄えるが、それを本当に理解しているわけではない。彼らは自分の言葉を聞いて自己満足し、他人の話には耳を貸さない。
  • こうした無駄に学識を誇る俗物は、どんなに神聖な場所でも騒ぎ立てる。セント・ポール大聖堂のような神聖な場所も、俗物たちからは守られない。どこへ逃げても、彼らは押しかけて喋りまくり、うんざりするほど話し続ける。
  • (そしてこの流れで「愚か者は天使すら恐れて足を踏み入れぬ場所に飛び込む」という有名なフレーズが登場。)愚かな人間は、自分の限界を知らず、恐れを知らずに向こう見ずな行動をする。
  • 慎重で知性のある人は、謙虚に考え、慎重に発言するが、愚か者は自信満々に、無駄な言葉をまくし立て、どんな場でも気にせず押し通す。

この歌詞においては

この歌詞においては、過去に何度も恋愛で傷ついた主人公が恋愛をリスクのある行為として捉えており、愚か者はそのリスクを顧みることなく恋に落ちるという意味で “fools rush in” という有名な一節が引用されている。”fools rush in” は直訳すると「バカは飛び込む」というシンプルな意味だが、アレキサンダー・ポープの詩を前提知識とし、そこに恋愛の文脈を考慮することで「バカほどすぐ恋に落ちる / バカほど何も考えずに恋に落ちる」という意訳が成立する。

▼エルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない」にもこのフレーズが引用されている。