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歌詞&和訳
Once again I’m in trouble with my only friend
まただ、僕のたった一人の友達のことで困っている
She is papering the window panes
彼女は窓ガラスに紙を貼っている
She is putting on a smile
彼女は作り笑いを浮かべている
Living in a glass house
ガラス張りの家に住んでいる
Once again packed like frozen food and battery hens
まただ、冷凍食品や養鶏場のめんどりのように詰め込まれて
Think of all the starving millions
飢えに苦しんでいる何百万人もの人々のことを考えてみろよ
Don’t talk politics and don’t throw stones
政治を語るな、石を投げるな
Your royal highness’s
殿下
Well of course I’d like to sit around and chat
もちろん、だらだらしたいよ
Well of course I’d like to stay and chew the fat
もちろん、気楽におしゃべりしたいよ
Well of course I’d like to sit around and chat
もちろん、雑談でもしたいよ
But someone’s listening in
でも誰かが聞いてるんだ
Once again we are hungry for a lynching
まただ、僕らはリンチに飢えてる
That’s a strange mistake to make
こんなおかしな間違いを犯すなんて
You should turn the other cheek
自分がやられる番になったら甘んじて受け入れろよ
Living in a glass house
ガラス張りの家に住んでいる癖に石を投げたんだから
Well of course I’d like to sit around and chat
もちろん、だらだらしたいよ
Well of course I’d like to stay and chew the fat
もちろん、気楽におしゃべりしたいよ
Well of course I’d like to sit around and chat
もちろん、雑談でもしたいよ
Only only only only only only only only only only
でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも
There’s someone listening in
誰かが耳を傾けている
和訳リンク
感想&解釈
「ライフ・イン・ア・グラスハウス」は2001年にリリースされたレディオヘッドの5枚目のアルバム『Amnesiac』に収録された一曲。
この曲は、このブログで翻訳記事を書く段階になって初めて歌詞の意味を激しく勘違いしていたことに気づいた。
“glasshouse“は「温室」じゃない!
まずタイトルにある”glasshouse“は「温室」という意味じゃなかった。
日本版CDの中に入ってる白い翻訳の紙がいけなかった。
そして今ダンボールの中から見つけてきた。
「反対の頬も差し出すべきなんだよ、温室暮らしのくせして。」
“turn the other cheek“の意味は?
その前に「反対の頬も差し出すべきなんだよ」の部分も怪しいと思った。
”turn the other cheek“の原義は、非暴力と許しを促すキリスト教の教義である。マタイの福音書第5章では、「目には目を」の代替案がイエスによって与えられていて、次の通りになる。
あなたがたは、「目には目を、歯には歯を」と言われたことを聞いたことがあります。 しかし、わたしはあなたがたに言います。悪い者に逆らってはなりません。しかし、誰かがあなたの右の頬を叩いたら、反対側の頬も向けなさい。 また、だれかがあなたを訴えて上着を奪おうとするなら、上着も奪わせなさい。誰かがあなたに1マイル行くように強要するなら、2マイル行きなさい。頼む人には与え、借りようとする人は断ってはなりません。
そう、つまりはビンタのための行動。
しかし、これは原義であって、今日、慣用句として通用している意味は「侮辱を甘んじて受ける」という意味である。
英英辞典のLONGMANでは以下のように解説されている。
to deliberately avoid reacting in an angry or violent way when someone has hurt or upset you
https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/turn-the-other-cheek
訳:「誰かがあなたを傷つけたり動揺させたりしたときに、怒りや暴力的な反応を故意に避けること」
後述するが、この意味こそが、この歌詞の文脈に完全に当てはまる”turn the other cheek”の意味であるため、原義の意味である「反対の頬も向けろ」で捉えない方が良い。
温室暮らしではなく
そして「温室暮らし」の部分。
この歌詞で使われている”glass house”に「ぬくぬくとした恵まれた環境で世間の苦労を知らない」というような「温室育ち」の意味は全くない。
まずこの歌詞を理解するために必要になる英語の諺の知識があって、それが
“people who live in glass houses shouldn’t throw stones”
直訳すると「ガラス張りの家に住む人は石を投げるべきじゃない」。
これは「欠点を持っている人は、同じように欠点を持っていることで他の人を批判してはいけない」という意味になる。
この諺を知っているだけで歌詞の意味がすいすいと入ってくる。
以下は海外の反応。
メディアが取材対象に突撃するときに、家族のつながりだけで多大な迷惑を被る人がいて、そういったことをテーマにした曲。
夫がメディアに何週間にも渡って執拗に追いかけられていた女性についても話していて、彼女は、彼女と夫に関する新聞の写真を家の窓すべてに貼りつけて、メディアが代わり映えのない、家の外観の写真しか撮れないようにしたそうで、トムはそのエピソードを気に入って、歌詞の中に”She is papering the window panes”というフレーズを入れたんだ。
これはメディアの侵入というテーマに非常に上手く適合するね。誰もが(とりわけメディア)、他者を批判し、裁こうとしたがっている(ぼくらはリンチに飢えてる)。ガラス張りの家に住む人とはメディアのことであり、歌は彼らに向けられている。
ガラス張りの家に住む人がメディアのターゲットになった人とその家族であるなら、石を投げているメディアも同じくガラス張りの家に住む人である。
“people who live in glass houses shouldn’t throw stones”「欠点を持っている人は、同じように欠点を持っていることで他の人を批判してはいけない」という諺はまさにメディアにとっての教訓のような言葉と捉えることができる。メディアは問題を起こした人に突撃取材をして吊るし上げるが、そんな彼らが人を批判できるほど普段から模範的な人間なのかは大いに疑問であり、この曲はメディアに対する批判的な曲と捉えることができるという意見だ。
つまり“You should turn the other cheek”の部分の歌詞は、普段からリンチに飢えているメディアや、それに乗っかって他人を叩こうとする人間に対して、「おまえがリンチされる番になってもやり返そうとするなよ、甘んじて受け入れろよ」という意味であり、これが歌詞の文脈を完全に理解できる意味であるため、「反対の頬も差し出すべきなんだよ」という訳はやはり避けた方が無難だろう。