動画

スタジオアルバム未収録曲
Radiohead
曲情報
「ポップ・イズ・デッド」は『Pablo Honey』と再リリースされた”creep”の間にシングルとしてリリースされたが、レディオヘッドのどのアルバムにも収録されていない唯一のシングルとなった。
ダサすぎると話題になったMVは、トム・ヨークが書いたトリートメント(プロットをまとめた文書)に基づいて制作されている。映像では、彼は透明な棺に入れられてイギリスの田園地帯を運ばれていく。 行列にいたのはレディオヘッドのファンクラブの会員たちだった。
このMVはYouTubeからも抹消されているためVimeoの動画を貼った。歌詞の内容も、この時期のインタビューの内容も、MVも完全に黒歴史。
この曲は1993年4月に英国でシングルとしてリリースされた。トムはこの曲を“a king of epitaph to 1992”(「1992年に対しての碑文の王」)と表現した。リリース当時、バンドはまだこの曲に非常に興奮していた。 しかし、チャートではいまいち跳ねず、またこの曲が受けた痛烈なレビューを受けて、バンドメンバー全員がこの曲を自分たちの最低な曲の1つとみなすようになった。それ以来、彼らは自分たちの曲でこの種の皮肉を避けるようになり、恥をかくだけだとわかっていたので曲の解釈にすら言及しなくなった。
「ポップ・イズ・デッド」の知られている最後のライブ・パフォーマンスは、1995年6月24日に新宿のリキッド・ルームで行われたジャパン・ツアー中に行われた。
バンドメンバーがインタビューで語ったこと
「僕がブリットポップで本当に嫌いだったのは、うんざりするほどの皮肉だった。まるでバンドが真剣なものであるべきではないかのようだった。」とコリンは憤慨する。
「俺たちは皮肉を言わない」とエドは断言する。「俺たちが皮肉を言おうとしたのはアメリカにいたときだけだった。そこでは、みんなが理解できない皮肉を言って、『ポップ・イズ・デッド』はくだらないものだった。驚いたことに、土曜の朝のテレビ番組のオファーは殺到しなかったよ。 」
メロディーメーカー、1997年5月24日
エドのお父さんは素晴らしい人のようですね。彼はプライマル・スクリームを称賛し、音楽雑誌を読み、レディオヘッドの昔のビデオを笑いの種にしている。彼は実際にパーティーを開いて、仲間全員にビールを数杯飲ませ、冗談を言ったりしながら、必然的に「Pop Is Dead」のプロモーションの再上映をする流れになったりする。それが気に入ってるみたいでね。
「この部分で何が起こっているんだ?」 彼はリモコンを操作しながら息子に尋ねる。「これをミュージックビデオと呼ぶのか?それじゃあ、なぜこのシーンにトカゲがいるんだ?説明してくれ」ゲストたちがその大袈裟な言葉に笑い声を上げる中、彼はテープを何度も巻き戻して徹底的に楽しんだ。
「見ろ、トカゲだ。自分をオブライエンと名乗るか?息子よ、そうなのか?」
[…]
エド:実際のところ、『ザ・ベンズ』がリリースされたとき、俺たちはまだ人々の先入観と戦っていると感じていた。俺たちはそれが素晴らしいと思った。本当に良いと思わない限りレコードはリリースしない。しかし、俺たちは何も持ってなかった。批評家からのありがたいお言葉は十分に正当なことだった。なぜなら俺たちは信じられないほど一貫性のないバンドだったからだ。
人々が俺たちをクソだと思ったのは驚くべきことじゃない。そして俺たちは怪しげなシングルをリリースしていた。「ポップ・イズ・デッド」は、くだらないレコードだったと認めざるをえない。
コリン:キース・リチャーズなら、それは教育の代償だと言うだろう…
NME、1997年6月21日
インタビューに関してはAnyone Can Play Guitarの記事に掲載したインタビューの中でも”Pop Is Dead”について触れています。
歌詞の意味
この曲は、メディアがあらゆるものを新しいロックンロールとして再パッケージ化しようとする様子を風刺している。
こういう問題の指摘はブラーも「B.L.U.R.E.M.I.」の中で歌っているが、そのコンセプト自体は問題なく、ブラーにとってもその曲が黒歴史になっているわけでもない。この曲がレディオヘッドの中で黒歴史になった最大の理由はインタビューでの痛さにあると思う。=>Anyone Can Play Guitarの記事参照
「メディアがあらゆるものを新しいロックンロールとして再パッケージ化しようとする様子」とは、例えば、音楽性は全く従来のものと大差ないのにファッションがロックというだけで新しいジャンル名を与え、音楽史(ロック史)の新しい現象として、メディアが持て囃して業界を盛り上げようとする様子を言っている。
しかし、この頃のレディオヘッドは、スマッシュヒットした「クリープ」のメロディが盗作であり、まだ偉大な曲を世に出した経験もなく、大御所のアーティストたちをdisってカリスマ性を得ようとしていただけの有象無象でしかなかった。
One final lot of coke問題
この曲で最大の謎フレーズ“One final lot of coke to jack him up, jack him off”をどう訳すか、どう解釈するか。これは海外でも謎フレーズ扱いされていたのでフィーリングで理解するしかない。
One finalは「最後の、最後にもう一回」。”lot of coke”は「たくさんのコカイン」。”jack him off”の”him”は直前のpopもしくはpop star。jack offは「元気づける」という意味。
つまり文字通り訳すなら「ポップを元気づけるためのたくさんのコカインを最後にもう一度」となる。
この訳で行けば「フェイスリフトのやりすぎで、彼の顔は飛んでっちゃったよ」とポップスターの美容整形問題を取り上げるフレーズと並列の関係でポップスターのドラッグ問題を語っている部分と解釈できる。
しかし、インタビュー情報などから推測できる、文脈に沿った意味を考えるなら「再パッケージ化されたものがポップ(及びロック)を復活させる」と解釈する方が自然だろう。
ちなみにトム・ヨークはインタビューの中で侮蔑的な意味でポップという言葉を使っている。魂を売って大衆迎合的な音楽をやることをポップと呼んでいる。つまりここでのポップへの批判は魂を売ったロックアーティストへの批判も含まれている。それがブーメランとなって自分たちに突き刺さっているからこそ、黒歴史になってしまったわけだが。
以下のシカゴでのライブ動画では、(52:17~)”One final lot of coke for Whitney Houston“とアメリカのポップアーティストをdisっている。




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