【曲解説】Radiohead – Fitter Happier

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曲情報

「フィッター・ハッピアー」は1997年にリリースされたイギリスのロックバンド、レディオヘッドの3枚目のスタジオアルバム『OK Computer』に収録された曲。

インタビュー情報

フィッター・ハッピアー
ティロンティロンと音を立てるピアノ、キーッと鳴るヴァイオリンのサウンドトラックに合わせて、現代のライフスタイルのバズフレーズをコンピューターがランダムに読み上げる。そして…それだけだ。本当に。変な曲。

コリン:トムがそれを読み上げなきゃいけないことを嫌がったから、僕らはコンピューターのボイスボックスをいじくりまわしていたんだ。機械音声にもかかわらず感情が伝わってくる様子がとても気に入ったよ。だからそのままにしたんだ。
トム:コンピューターは当時、僕が今まで聴いた中で最も感情的な声だったよ。
コリン:スティーブン・ホーキング博士がアルバムにゲスト参加しているみたいだね。そうすべきだったかもしれない。大学時代、車椅子でよちよち歩いている彼をよく見かけたよ。
重要な歌詞:関心を持って(無気力でも)
トム:歌詞は自身の人生を反映したものですか?そうだよ。
エド:現代のライフスタイルに自然さが欠けていることを歌っているんだ。『GQ』や『FHM』のような恐ろしい雑誌の1つに全面広告として歌詞が掲載されて欲しいな。だって、そんなことを信じてしまう人もいるかもしれないからね。
コリン:本当に、ランダムで混沌としていて自分では制御できないように見える物事の中に意味を見出す訓練なんだ。人生にちょっと似てるね、本当に。

メロディ・メーカー1997年5月31日号

Q:これがこれまでで最も突飛であり、同時に最も成功したアルバムであるという事実を面白がってる?

エド:そうだね。レコード会社もこの作品がこれほどうまくいくとは予想していなかったと思う。でも、それはむしろ音楽全般に関係していると思う。すべてが広がったようなんだ。このレコードで、僕らはそれを誇りに思ったけど、もしかしたら、部分的には少し…ひねくれていたかもしれない。「Fitter Happier」のようなものをアルバムに入れるとき…それは入れなければならなかったが、それをどこに置くかが問題だった。それを一曲目にしたら「とんでもない、おまえらはまともな人間の境界線を越えたのか」ってなっただろうからね。

セレクト・マガジン、1997年12月、フィレンツェでの10月下旬のインタビュー

Q:「Fitter Happier」についてはどうですか?まるで自己啓発本からそのまま持ってきたかのようですね。

トム:人生を向上させるための本をたくさん買ったんだ。ある本には、「純粋にみんなを好きにならないと友達はできない」って書いてあった。ああ、じゃあ、僕はダメなんだって思ったよ。その本のレガシーはまだ続いている。いまだに成功する方法は笑顔を取り入れることであり、笑顔が売れるのだと本気で信じている人々に出会うよ。「商品を信じなければ商品は売れない」ってね。

ローリング・ストーン、1997年12月号

歌詞の意味

疑うことを徹底的に排除するディストピア

この執拗に恐怖することを否定している部分はオーウェリアンなディストピアとして捉えることができる。

暗闇に怯えるのはそこに何かがいるかもしれないと疑うからである。疑う気持ちを日常の細部に至るまで徹底的に排除することで体制にとって都合の良い人間を作ろうとしているのでは?という捉え方ができる。

自動引き落としで慈善活動へ寄付することの意味は?

この部分もディストピア。本来は善意から来る人間的な行為であるはずのものが、口座から自動引き落としされることで機械的かつ非人間的な行為になってしまっている。

逃げるチャンスがないのはなぜ?

この部分はつながっている。自営業は全ての責任が自分にのしかかっている。逃げている暇なんてない。

弱者をあざ笑う能力ではない

ちなみにこの文は棒が糞に突っ込まれてるのか猫が糞に突っ込まれているのかわからないことが海外で話題になっていた。日本語でもどちらかわからない。

「弱さを笑える能力」の部分は、日本版CD付属の和訳では「弱者をあざ笑う能力にたけ」と訳されていた。しかし、この曲の作詞のプロセスが自己啓発本からの借用であることを考えると、その意味はポジティブに「自分の弱さを笑って済ませられる能力」である可能性が高い。つまり、この部分でこのフレーズが差し込まれているのは「冬の凍った糞に突っ込まれている棒に縛られた猫のように」困難な状況に追い込まれていても、自分の弱さを笑える能力ということで、歌詞全体に漂うディストピアにおける体制にとって都合の良い人間を作るためのフレーズという意味でも一致する。

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