【和訳】Radiohead – Pearly*

動画

歌詞&和訳

How’d you
Get your
Teeth so
Pearly?

どうやってそんなに真珠のような歯を手に入れたんだ?

Dew-drop
Dentures
Whitewashed
Faces

雫のような造り物の歯に
うわべを飾った顔

She runs from
The third world, pearly

彼女は逃げる
第三世界から、真珠のように白くなって

Vanilla (feel it crawl to me)
Milkshakes (crawl back again)
From Hard Rock (whatever you say)
Cafes (it won’t go away)

バニラ(這い寄ってくるのを感じて)
ミルクシェイク(再び這って戻ってくる)
ハードロック(何を言おうと)
カフェの(それは消えない)

That’s where (I feel it crawl to me)
She got her (crawls back again)
Sweet tooth (it won’t go away)
For white boys (whatever you say)

そこで(私の元へ這い寄ってくるのを感じて)
彼女は手に入れた(また這って戻ってくる)
素敵な歯を(それはいなくならない)
白人の男の子のために(何を言おうと)

She runs from
The third world, pearly

彼女は逃げる
第三世界から、真珠のように白くなって

Use me
Darling Use me
Darling Use me
Darling Use me

私を使って
ダーリン私を使って
ダーリン私を使って
ダーリン私を使って

和訳リンク

曲情報

 「パーリー」は1997年に発売されたレディオヘッドの4枚目のEP『No Surprises/Running from Demons』に収録された曲。

解釈

第三世界は何のこと?

 まず、セラミック差し歯でピカピカの白い歯に、メイクをして着飾った女の子が逃げる世界ってなんだろうと思った。

訳案① 売買春の世界から足を洗う女の子

 直感的には売春で経験した吐き気のするような嫌な世界から逃れているのかなと思った。逃れたい「第三世界」はそういう本来相手をしたくないおじさんたちの売買春の世界で、white boyは「汚れを知らない男の子」と訳すとしっくり来る。

訳案② ルッキズムに囚われた醜形恐怖症の女の子

 この曲のテーマをルッキズムに囚われた醜形恐怖症の女の子と解釈するなら、彼女が逃れたい「第三世界」は白い歯を手に入れる前にいた世界。自分の容姿を蔑んでいた世界(たとえば中学時代の経験等)、あるいは容姿が洗練されていない世界。white boyは外見至上主義の彼女が熱を上げている見た目の良い白人の男の子と解釈できる。

()の中はどう訳す?

 2番のバニラ・ミルクシェイク・ハードロック・カフェの()の部分の解釈がまた難しい。

 ここでは”I”または”me”の「私」と”you”の「君」と這い寄ってくる”it”の「そいつ」がいる。ここまでは物語の語り手が「彼女のこと」を歌っているが、この()の中が同じ語り手とは限らず、”I”と言っているのは「彼女」かもしれない。這い寄ってくるものを感じているのは「彼女」なのかもしれない。

 そして”you”は一般的な、不特定の、訳す必要のない”you”かもしれない。”whatever you say”は「君が何と言おうと」という意味だが、「(誰が)何と言おうと」の意味で”you”が使われている可能性もある。そう考えると()内の登場人物は「私」と「そいつ」だけである。

 ”it”「そいつ」は普通に訳すならRadioheadおなじみの”Planet Telex”的なパラノイアの症状だが、語り手がトム・ヨーク、あるいは他の人間だとして、パラノイア的な症状を抱えながら歯がぴかぴかな女の子について言及していると解釈すると、状況があまりにもカオスで、テーマがぶれているし、良い歌詞にはならない。やはり、この()内の主観は「彼女」と解釈したい。しかし、セラミック差し歯でピカピカの白い歯に、メイクをして着飾った女の子に這い寄ってくる「そいつ」って何だろうと。そういう世俗的な欲求を満たすために遊んでる女の子と、この種のパラノイアは少し親和性が低いように思う。

 「訳案① 売買春の世界から足を洗う女の子」の線で言えば、望まない相手と性交渉をしたことで生まれた心の傷、トラウマ、嫌な感覚。「訳案② ルッキズムに囚われた醜形恐怖症の女の子」の線で言えば、自分が「醜形」になってしまうんじゃないかというような「恐怖」、あるいは、整形に依存している「強迫観念」。

 このように「這い寄ってくるそいつ」が彼女を悩ませるものだと解釈する方が歌詞に一貫性が生まれ深みが出る。

Use me は誰が言っている?

 最後の”Use me”も誰が語っているかで歌詞の意味が全然違ってくる。「彼女」のことを客観的に話している物語の語り手が言っているのだとすると、歯がピカピカな女の子に恋をした男が「僕を利用してくれ」と言っていることになる。しかし、この気持ち悪い歌詞が、「彼女」に対しての恋愛感情を歌っているとは思えない。ありえなくはないが。

 この部分も「彼女」の言葉として訳す方がしっくり来る。”white boy”のために自分の見た目に投資した女の子が「私を使って」と言っているのである。そうなると病的なほどに愛に飢えた寂しがり屋の女の子の曲とも解釈できるようになる。愛されたい症候群の女の子がテーマの曲なのかもしれない。 

white boy をどう訳す?

 普通に訳せば「白人の少年」だけど、whiteには意味が多いので歌詞全体の解釈の仕方次第で訳し方が違ってくる。「訳案① 売買春の世界から足を洗う女の子」の線で言えば、汚れた客のおじさんたちとは違う「汚れを知らない男の子」のために、自分の見た目に稼いだお金を投資する女の子と解釈できるし、「訳案② ルッキズムに囚われた醜形恐怖症の女の子」の線で言えば、ルックスの良い「白人の男の子」だろう。そして、「私を使って」と言っているあたり、その男の子はアイドルか、もしくはトム・ヨークから出てきた言葉ということを考えると若手の人気ロックバンドのメンバーか何かで、この女性はグルーピー(追っかけ)と解釈することもできる。

バニラ・ミルクシェイク・ハードロック・カフェの解釈

 バニラ・ミルクシェイクは共に白いもので、”white boy”とセラミック差し歯でぴかぴかの白い歯と合わせている。ハードロック・カフェは上述した「彼女が若手人気ロックバンドのグルーピー」という説を強める部分になっている。

ライブ動画