【和訳】Beck – Little One

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歌詞&和訳

Go to sleep
眠ろう
We’re so tired now

今、僕らは疲れすぎている
Altogether in a snake pit of souls

まるで魂の蛇の巣穴の中で
New days

新しい日々
Throw your chains away

纜を解いて
Try to hang your hopes on the wind

希望の帆を張り風を受けよう

Little one
か弱い存在
Just a little way

ほんの些細なこと
Today all we need is waiting

今日の僕らに必要なのは待つことだけ

Night rise
夜明け
Like the evening prize

夕方の素晴らしい景色のような
In a turnstile backwards we fly

過去に遡る回転式ゲートを進む中で
Cold bones

冷たい骨は
Tied together by

Black ropes we pulled from a swing

黒いロープで結ばれ、僕らは揺れに引っ張られる

Little one
か弱い存在
Just a little way

ほんの些細なこと
Today all of the dreams are waking

今日、すべての夢が目覚める

Can’t stand on crooked legs
曲がった足じゃ立てない
I’m cross-eyed to the wall

僕は壁に向かい合って寄り目になっている
In these harbor lights

この港の明かりの中で
Satellites explode

衛星が爆発する

Drown, drown
溺れて、溺れて
Sailors run aground

船乗りたちが座礁する
In a sea change nothing is safe

海の変化の中で安全なんてない
Strange waves

見たこともない波が
Push us every way

すっかり僕らを押し流す
In a stolen boat we’ll float away

盗まれた船で僕らは漂っていくだろう

Little one
か弱い存在
Just a little way

ほんの些細なこと
Today all we need is waiting

今日の僕らに必要なのは待つことだけ
Little one

か弱い存在
Just a little way

ほんの些細なこと
Today all of the dreams are waking

今日、すべての夢が目覚める
Little one

か弱い存在
Hold on

しがみついて
Hold on

しがみついて
All of the dreams are waking

すべての夢が目覚めつつある

和訳リンク

曲情報

 「リトル・ワン」は、アメリカのミュージシャン、ベックによる8枚目のスタジオアルバム『Sea Change』に収録された曲。プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチとともにロサンゼルスで2か月にわたってレコーディングされたこのアルバムは、失恋と荒廃、孤独と寂しさをテーマにしている。この曲の歌詞にはアルバムタイトルにもなっている”Sea Change”という言葉も含まれており、アルバム全体を理解する上で重要な曲である。

解釈

眠ろう
僕らは今疲れすぎている
まるで魂の蛇の巣穴の中で

 「蛇の巣穴」が何を意味するかはわからないが、不倫発覚後の精神的な疲れと孤独な鬱生活を表している。

新しい日々
纜(ともづな)を解いて
希望の帆を張り風を受けよう

 「纜」は船をつなぎとめる綱のこと。

 このアルバムの1つ前の曲である”Sunday Sun”は鬱生活の終わりを歌った明るい希望に満ちた曲だったが、その後に持ってきたこの曲も、過去のしがらみに囚われた生活から抜け出て、前向きに新しい日々を始めようしていることが窺える。

Little one
か弱い存在
Just a little way

ほんの些細なこと
Today all we need is waiting

今日の僕らに必要なのは待つことだけ

 サビ部分。曲のタイトルにもなっている”little one“は幼い子どもに対する愛情を伴った呼び方である。

 ベックは現在、妻のマリッサ・リビシとの間に、息子のコジモと娘のチューズデイの2人の子供がいるが、このアルバムで歌っている元・婚約者のリー・リモンとの間には子どもはいなかったため、この「かわいい君」は子どもたちのことではない。

 「Little one」が誰を指すかだが、これは愛情を込めた呼び方であるため、不倫をしていたリー・リモンについて言っているとは思えない。一般的なすべての人間のか弱さ、脆さを指しているのかもしれない。

 「Just a little way」は目的があって、それに到達するためのway(方法、やり方、道)が些細なことだと言っている。

 「ほんの些細なこと」、「今日の僕らに必要なのは待つことだけ」は、そんなに頑張る必要はなく、ただ今の鎖に繋がれた孤独で怠惰な生活をやめて、普通に外に出て人と交わる生活して、後は出会いや幸運な出来事を待つだけで人生は好転すると言っているのだと解釈した。行動を起こすハードルを下げるための言葉である。

夜明け
夕方の素晴らしい景色のような
過去に遡る回転式ゲートを進む中で
冷たい骨は
黒いロープで結ばれ、僕らは波に引っ張られる

 「回転式ゲート」は船のスクリューのメタファー?メタファーのメタファー?

 「冷たい骨」は骨まで冷えるような寒さを表していて、過去を思い返す行為のつらさと夜明けの海上の冷えのつらさを重ねていると解釈できる。

 ちなみにベックの歌詞には骨がよく出てくる。トム・ヨークが”worm”好きならベックは”bone”好きである。例えば、“Girl”や“Where It’s At”や“Jack-Ass”に出てくる。ベックはこれに関してインタビューでこう答えている

僕が思うに「何かの核心」を言い表すときに「心」という別の言い方もあるけど、でも「心」というのは使い古された比喩だ

 ”swing”は揺れのことであり、海上での船の揺れのことである。「黒いロープ」は、Aメロで”Throw your chains away”とあったように、それは自分を縛る鎖であり、纜(ともづな)である。つまりここでは過去のしがらみにとらわれることを夜の海上で黒いロープに絡め取られ身動きが取れなくなった船に例えているが、それは夕方の素晴らしい景色のような夜明けがやって来ていて、希望が見えている

今日、すべての夢が目覚める

 そのままの意味。鬱状態の生活から抜け出し、元々持っていた夢や目標に向かって進む意欲が出てきたことを表している。あるいは、なかなか行動できない自分を奮い立たせるための言葉ともとれる。

曲がった足じゃ立てない
僕は壁に向かい合って寄り目になっている
この港の明かりの中で
衛星が爆発する

 ”I’m cross-eyed to the wall”「僕は壁に向かい合って寄り目になっている」は壁との距離が近いため。今、鬱状態の生活から抜け出そうと試みているからこそ、壁(ハードル)の直前にいるということ。同アルバムの1曲目では”I don’t even try”(「頑張ってみようとさえ思わない」)と言っているが、そこから時間が経過し、社会復帰しようと頑張る気持ちになっていることがわかる。

 「この港の明かりの中で」は社会復帰した先にある世界。船がロープや鎖に絡め取られていたのは海上であり、そこから「港」、すなわち”Paper Tiger“における「文明へと戻る道」を選択することで、「衛星」=「元婚約者であるリー・リモンを含む過去のしがらみ」を完全に振り切ることができると言っている。

溺れて、溺れて
船乗りたちが座礁する
海の変化の中で安全なんてない
見たこともない波が
すっかり僕らを押し流す
盗まれた船で僕らは漂っていくだろう

 アルバムのタイトル”Sea Change”が出てくる部分。海に出たら、どこに暗礁があるか、いつ思いがけない波に押し流されるかわからない。つまり、この部分は一般論として人生に突然訪れる思いがけない困難や、社会で生きることの大変さを歌っている。