【和訳】Beck – Side Of The Road

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歌詞&和訳

Something better than this
これより良いこと
Someplace I’d like to go

どこかに行って、
To let all I’ve learned

これまで学んだことをすべて伝えたい
Tell me what I know
About the kind of life

人生について知っていることを再確認するために
I never thought I’d live

人生でこんなことが起こるとは思わなかった
Till the ugly truth
Showed me what it did

醜い真実が何をしたのか突きつけられるまで

Let it pass on the side of the road
道端に寄って聞き流そう
What a friend could tell me now

友達が今僕に伝えられることを

On a borrowed dime
In different light

別の光の中で借りた10セントなら
You might see what
The other side looks like
In a random room

君は乱雑な部屋の向こう側がどう見えるかがわかるかもしれない
Behind an iron door

鉄の扉の背後には
Kick an empty can
Across an empty floor

蹴った空き缶が空の床を横切っている

Let it pass on the side of the road
道端に寄って聞き流そう
What a friend could tell me now

友達が今僕に伝えられることを

和訳リンク

曲情報

 「サイド・オブ・ザ・ロード」は、アメリカのミュージシャン、ベックによる8枚目のスタジオアルバム『Sea Change』に収録された曲。2002年9月24日にゲフィンレコードからリリースされた。プロデューサーのナイジェル・ゴドリッチとともにロサンゼルスで2か月にわたってレコーディングされたこのアルバムは、失恋と荒廃、孤独と寂しさをテーマにしている。

訳解説&解釈

これより良いこと
どこかに行って、これまで学んだことをすべて伝えたい
人生について知っていることを再確認するために

 ”Someplace I’d like to go to let all I’ve learned”は「僕が学んだすべてを伝えるために行きたい場所」だが、意味が入って来やすいように「どこかに行って、これまで学んだことをすべて伝えたい」とした。

人生でこんなことが起こるとは思わなかった
醜い真実が何をしたのか突きつけられるまで

 「醜い真実」とはベックの元・婚約者リー・リモンの浮気のこと。

Let it pass on the side of the road
What a friend could tell me now

道端に寄って聞き流そう
友達が今僕に伝えられることを

 『Sea Change』は、人生の困難さが海上での船のイメージに例えられ、婚約破棄後の空虚で怠惰で孤独な生活が砂漠での車というイメージに例えられていた。この部分は陸上であることがわかるが、“Golden Age”のような夜の砂漠という感じはしない。周囲と比べ比較的ゆったりとした時間の流れの中で生きているように思える。

別の光の中で借りた10セントなら

 光は『Sea Change』の1曲目“Golden Age”にも出てくるが、人もしくは人の生活の比喩。ここでは他人の人生のことについて言ってる。
 すなわち、「自分の人生で借りたお金と他人の人生で借りたお金ではお金の見え方が違ってくる」=「もし他人の人生を経験していれば、今の自分とは違った物事の見方ができるようになる」ということと解釈した。

君は乱雑な部屋の向こう側がどう見えるかがわかるかもしれない
鉄の扉の背後には
蹴った空き缶が空の床を横切っている

 乱雑な部屋は「君」、すなわちベックの友達の部屋のこと。多くの物で溢れている様を表している。それとは対照的にベックの部屋は「蹴った空き缶が空の床を横切っている」ほど空っぽになっている。もう大切なものなど何一つなく、捨てられずに困っているようなものは何もなく、シンプルな状態で生きていることがわかる。鉄の扉は、ベックが他者との間に設けた精神的な壁を表現していると解釈できる。

曲順が時系列

 『Sea Change』の曲をすべて訳して解釈してきたが、曲順が完全に時系列順だった。この曲も同じように時系列順で考えるとすると、”sunday sun”が転機を表し、人と関わる生活に戻ったことが表現された後、最後のこの曲では、人と関わるようになったことで、複数の友人から言葉をかけられるが、その言葉に耳を傾ける気持ちがないことが歌われている。

 Beckの友人であるElliott Smithの”St. Ides Heaven“の次の一節に通じる部分がある。

‘Cause everyone is a fucking pro
And they all got answers from trouble they’ve known
And they all got to say what you should and shouldn’t do

 「だってみんなクソみたいなプロだから。自分の経験したトラブルから答えを持っていて、こうした方がいい、こうすべきじゃないって言ってくる」

感想

 歌詞の内容は悲観的に捉えることもできるが、メロディと合わせて、むしろ心地良い曲に思える。空っぽになったことで、頭がすっきりして、思考が明瞭になり、友人たちのリズムに合わせることなく、ゆったりとした自分の時間の流れの中にいて、ある種の達観から得られる心地良い状態の精神に至っているように感じた。

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